呼吸を鍛えると脳の何が変わる?呼吸トレーニング前後の脳波を比べてみた
ふだんの呼吸を、意識したことはありますか?
私たちは1日におよそ2万回、呼吸をしていると言われます。ほとんどは無意識です。でもこの無意識の営みは、じつは 「自律神経に自分から触れられる、数少ない入口」 でもあります。
今回は、そんな呼吸に特化したメソッドの効果を、簡易脳波計で計測してきました!
ZONEメンバーであり呼吸師の丹舟さん

今回のトレーニングを担当してくださったのは、根津のウェルネスハウスCÉLULA(セルーラ)の呼吸師・丹舟(TANSHU)さん です。
日本人として初めて国際呼吸トレーニング団体「Oxygen Advantage」の認定コーチ資格を取得し、鎌倉の禅をコンセプトにした宿泊施設では延べ10,000人以上に坐禅を指導。元海外アスリートとしての経験をベースに、「禅×呼吸×神経科学」 を組み合わせた独自のセッションをされている方です。
「息を止めて、自分が変わる」 を掲げるその指導は、パフォーマンスを高めたい方だけのものではありません。喘息をお持ちの方や、不安・パニックになりやすい方が日常で取り入れられる呼吸の方法 も大切な観点として、いつもセッションに織り込まれています。
Instagram: @tanshu_breath
指導: 呼吸師・丹舟(TANSHU)さん
受講: 普段から坐禅を実践し、継続して脳波計測をされているZONE会員の方
デバイス: Muse S Athena(ご本人所有)+Mind Monitor
内容: 約2時間の呼吸パフォーマンストレーニング
今回受講と計測を希望してくださったのは普段から坐禅を実践されているメンバー様。
**なので、**メソッド中の脳波に加えて、メソッド前とメソッド後で坐禅中の脳波がどう変わるのか?も計測してみました!
流れはシンプルです。まず 「トレーニング前の坐禅」 を計測し、呼吸トレーニングを挟んで、最後に**「トレーニング後の坐禅」**を計測しました。
2時間のセッション内容
当日の流れを最初から最後まで並べると、こうなります。
息を吐いて止め、吸いたくなるまでの秒数で「呼吸の現在地」をチェック
② 3方向呼吸の確認・横隔膜ウォームアップ(約12分)
横隔膜がお腹・脇腹・背中側にきちんと動けているかを確認
③ 横隔膜3点マッサージ(約2分)
呼吸まわりの筋肉をゆるめる
④ ゆる体操・足裏ほぐし・バランステスト(約23分)
身体全体をほどいて、呼吸の通り道をつくる
⑤ スクワット姿勢の確認(約7分)
呼吸と姿勢のつながりをチェック
⑥ BOLTスクワット 6セット(約9分)
動きながら呼吸に負荷をかける
⑦ ボックスブリージング 8-8-8-8(約5分)
吸う・止める・吐く・止めるを同じ長さで回す
⑧ トライアングルブリージング 8-12-16(約9分)
吐く息をどんどん長く
⑨ パワーブリージング(約12分)
強く速い呼吸で一気に高める
大事なことがひとつあります。この9フェーズは、決まりきったメニューではありません。冒頭のカウンセリングで聞き取った悩みや目標、BOLTスコアの結果、ご本人のこれまでの経験を踏まえて、丹舟さんがその場でカスタムメイドで組み立てた構成 です。同じセッションを受けても、人によって中身は変わります。
そのうえで前半の①〜⑥は、ほとんど 「呼吸の下ごしらえ」 です。呼吸筋が硬いまま呼吸法だけ真似しても入りにくい。「ゆるめてから、鍛える」 という設計思想が見えてきます。
最初の計測で見えた「呼吸の現在地」
トレーニング冒頭のBOLTスコアは、こんな結果でした。
BOLTスコアは、息を静かに吐いたあと 「最初に吸いたくなるまでの秒数」 を測るシンプルなチェックで、呼吸効率の目安になります。計測はこの冒頭の1回。トレーニング後半に出てくる 「BOLTスクワット」 は再計測ではなく、この感覚を使って呼吸に負荷をかけるトレーニングです。
日頃から坐禅と呼吸のワークを続けている受講者さんは、開始時点ですでにアスリートの目標水準。それでも、ここからさらに変わるのが面白いところです。
呼吸トレーニング中、脳はどう動いたのか
セッションのあいだ、脳波はフェーズごとにはっきり表情を変えました。まずは全体像です。

・緑の線=アルファ波(リラックス)、青の線=シータ波(まどろみ・瞑想)
・番号の帯が変わるたびに、線の表情が変わっています。呼吸を変えると、脳はすぐに応えるということです
特に分かりやすかった後半の3つの呼吸法を、それぞれ拡大して見てみます。
⑦ ボックスブリージング
吸う8秒 → 止める8秒 → 吐く8秒 → 止める8秒。正方形の辺をなぞるように、4つの動作を同じ長さで回していく呼吸法です。動きの多かった⑥までと打って変わって、ここからは座ってじっくり呼吸に向き合います。

データでは、ボックス開始の直後から アルファ波が一段高いところへ上がりました。横隔膜を使ったゆったりとした呼吸で、副交感神経が優位になっていく典型的なパターンです。「呼吸を数えているだけで、脳がリラックス側に切り替わる」 様子がそのまま線に出ています。
⑧ トライアングルブリージング
吸う8秒 → 止める12秒 → 吐く16秒。今度は三角形。吐く息を吸う息の2倍まで伸ばしていきます。1呼吸に36秒かける、かなりゆったりしたパートです。

このパートの面白さは、アルファ波もシータ波も 「長い呼吸のリズムに合わせて、大きくゆったりした波を描き、繰り返し高いピークに達する」 ところです。じっと一定になるのではなく、深いうねりの中で静と動を行き来する。長く吐くことで副交感神経がしっかり働く時間が生まれている様子が見えます。
⑨ パワーブリージング
仕上げは一転して、強く速い呼吸を繰り返して一気に高めていく アクティブな呼吸法です。ここまでの静かな流れから、最後にぐっとギアを上げます。

データはジェットコースターのようでした。前半は脳波が激しく揺さぶられ、線が大きく上下します。ところが 後半、アルファ波とシータ波が揃って急上昇。強い呼吸で一度身体を揺さぶってから手放すと、脳が一気に深く静かな状態へ入っていく。丹舟さんの言う 「フロー状態への突入」 が、そのまま記録に残っていました。
坐禅の変化
本題はここです。トレーニング前後の坐禅を、瞑想の深さの目安としてよく使われる 「シータ波とアルファ波のバランス」 で見比べます。

・高い=まどろみ寄りの深いリラックス(眠りに近い、うとうとした心地よさ)
・低い=目が覚めたままの静けさ(頭はクリアなのに、思考が静か)
・どちらが良い悪いではなく、「静けさの質」が違うと読んでください
トレーニング前の坐禅は1.11。まどろむようなリラックスで、これ自体はとても良い状態です。ところが呼吸トレーニングを挟んだ後の坐禅では0.30まで下がりました。眠りに近い帯域が約5分の1まで減り、アルファ波が主役になったのです。
つまり変化の方向は 「もっと深く沈んだ」ではなく「クリアに澄んだ」 でした。うとうとする気持ちよさから、「頭は冴えているのに、思考だけが静かになる」 状態へ。この0.30という値について丹舟さんは、坐禅の熟練者が 「無」 に入ったときと脳波的に同じ水準だと話してくれました。
【終わりに】どんな人に向いているのか
今回のデータを通して見えてきたのは、丹舟さんの呼吸トレーニングが 「眠るようなリラックスへ導くもの」というより、「自分を覚醒させ、研ぎ澄ませていくメソッド」 だということです。
坐禅の変化がまさにそうでした。うとうとする心地よさではなく、頭が冴えたまま思考だけが静かになる方向へ。だからこのワークは、癒されたい方はもちろんですが、それ以上に 「集中したい」「ここぞの場面でパフォーマンスを上げたい」 という方にこそおすすめしたい内容です。瞑想を深めたい方にとっても、「明晰さ」 という新しい入口になるはずです。
同時に、丹舟さんのセッションには 「日常で使える」 というもうひとつの顔があります。喘息や、不安・パニックになりやすい傾向をお持ちの方に向けて、ふだんの生活に取り入れられる呼吸の方法を織り込みながら組み立てられているのです。
・坐禅や瞑想の「質」をもう一段変えたい方
・喘息をお持ちで、日常の呼吸をラクにしていきたい方
・不安やパニックになりやすく、自分を落ち着かせる方法を身につけたい方
・自分の変化をデータでも確かめてみたい方
呼吸と脳の関係は、まだ研究の途上にあります。今回の結果も、お一人の、ある一日の記録です。同じことをすれば誰でも同じになる、というものではありません。それでも、論文の中の平均値より、「自分の脳が、今日どう動いたか」 を眺めるほうが、ずっと発見があります。
この計測を行ったセルーラで、2026年8月22日(土)に丹舟さんの呼吸ワークと松果体スパを体験できる特別ワークショップを開催します。詳しくは告知記事をご覧ください。
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